まもなくあいつがやって来た。

よかった。来てくれた。

それだけですごく安心した。

「で、話って何?俺忙しいんだけど。」

今まで見たこともないくらい冷たい表情でぶっきらぼうにそう言った。

「ごめん。要、本当にごめん。お前が辛い時そばにいれなくて。みんなが離れて行ったとしても、俺はお前のそばにいなきゃいけなかったのに。ごめん。」

要は何も言わずに黙っていた。

俺は迷ったが、そのまま続けた。

「もう一度俺に要のそばにいさせてくれないか?要、何かあったんだろ?優しいお前が俺たちを突き放すようなことを言うはずがない。頼りないかもしれないけど、俺にも少しは頼れよ。」

どうか伝わってくれ。

要…。

心の中でそっと祈る。

「ありがとう、歩。そう言ってくれて嬉しかった。だけど俺は大丈夫。何もないよ。」

そう言った要の表情はさっきの冷たいものではなかったが、やはり笑顔をなくしてしまったようだ。

俺が要から笑顔を奪った。

全部俺のせいだ。

あの時、俺だけはそばにいるべきだった。

「要…。どうして…どうして、笑わなくなっちゃったんだよ?もう一度俺のそばで笑っててくれよ…。」

俺はそう言いながら、要の手を握る。

それでも要は表情一つ変えずに俺の手をやんわりと離した。

「歩、お前のせいじゃないよ。自分を責めないで…。俺は大丈夫だから。」

そう言って要は屋上から去って行った。