でもある時気づいたんだ。

あいつが笑わなくなってしまったことに。

授業中、先生達の面白い話もいくらみんなが笑っていてもあいつはもう一瞬たりとも笑わない。

クラスメイトに話しかけられても愛想笑いさえしない。

どうしてだ?

何かあったのだろうか?

そう思ってあいつをこっそりと盗み見ていた。

そんなことをしているうちにあっさりとあいつとバッチリ目が合ってしまった。

あいつは俺と目が合うとすぐにそらしたが、俺はあいつの目を見て絶句した。

あいつの瞳はもう真っ暗だった。

あの頃のような光などない。

闇に包まれていて死んだような目をしている。

「要!」

俺はとっさに名前を呼んだが、あいつは振り返らずに行ってしまった。

その日からあの瞳のことが忘れられず、チャンスを伺っては、あいつに話しかけていた。

それでもあいつは適当な相槌しか打たない。

しまいには勉強するからと言われ、話を区切られてしまう。

そんな俺を見兼ねてか他の3人からも止められていた。

あんなやつに話しかける必要ないと。

あいつが俺たちから離れて行ったんだと。

それでも俺は諦めたくなかった。

みんなよりも要と過ごしてきた時間が長い分、俺はあいつのことをよく知っていたんだ。

本当は辛いのに何もないように振る舞うところも。

自分のことはいつも後回しで誰よりも思いやりがあって優しいことも。

だからあいつが変わってしまったのにはきっと深い理由があるんだと思う。

今頃になって気づくなんて遅いけれど、俺はあいつにもう一度そばで笑って欲しい。

そう思うようになった。

そして意を決してあいつを屋上に呼んだ。

あいつと2人きりで話がしたくて。

あいつの本当の気持ちが知りたくて。

あいつより一足先に屋上に来て、青空を見上げる。