「それでは、麻生さんの志望校のことですが、こちらで確定でよろしいですね?」

「はい。」

「優美さん、大変よく頑張っていますから、このままの成績をキープできれば、合格圏内ですので、大丈夫だと思います。」

「そうですか…。」

そう言った麻生のお母さんは全然信じていないようだった。

むしろ手元の成績表を見て、顔をしかめることもしばしば。

何か気になることでもあるのだろうか?

受験に絶対なんてないし、最難関大を志望しているからこそ、余計に心配なんだろう。

どんなに頑張っていても、模試でA判定でも実際に開けて見なきゃ分からない。

しかも1回限り。

それが受験の残酷なところだ。

「お家の方では進路のことなど、お話はされていますでしょうか?」

「はい。大丈夫です。」

さっきから麻生は何も話さない。

ずっと膝の上で手を握って静かに座っているだけだ。

「何かご心配なことは

そう俺が言いかけた時、携帯が鳴った。

どうやらお母さんの携帯のようだ。

「ちょっとすみません。」

そう言ってお母さんは教室を出て行った。