「優美、戻ってこないか?」

「え‥」

お父さんの唐突な言葉に困惑する。

そんな私を知ってか知らずか、お父さんは言葉を続けた。

「優美との時間を作るようになってから、少しずつ家族らしくなってきたと思うんだ。」

確かに、普通の家族のようにたわいもない話ができるようになったと思う。

一緒に食事したり、出かけたりすることも増えた。

「だからもっと優美と過ごす時間を作りたいと思ってな。優美がここに帰ってくれば、もっと家族一緒に過ごす時間が増える。お母さんとも話したんだけど、優美さえよければ、また一緒に住まないか?」

その言葉にすんなり頷けない自分がいた。

お父さんとお母さんと住むのが嫌なんじゃない。

私がここに戻るということは、悠との2人きりの生活は終わりを告げるということだ。

暖かくて優しくて幸せな、あの生活を手放すことになる。

「今すぐとは言わないの。優美だって都合があるでしょ?だから3月くらいにどうかなって思って。ちょうどマンションの契約更新月なのよ。」

お母さんが慌てたように言葉を紡いだ。

黙ったままの私を見て不安になったのだろう。

「ちょっとだけ、時間もらってもいい?」

「あ、うん。もちろん。」

そう言ったお母さんの表情が悲しげだったのには気づかないふりをした。

そのあと、すぐお父さんとお母さんは呼び出されて病院に行った。