笑顔の裏側に

「マスター、すみません。休憩室、お借りします。しばらく2人にしてください。」

「え、あ、どうぞ。」

そして休憩室に連れてこられた。

悠の膝の上に横向きで座らされた。

悠の首に手を回してギュッとくっつく。

「優美、ここにはもう俺しかいないよ。だから大丈夫。」

そう言って私の震えが治まるのをずっと待ってくれていた。

静かな空間と優しい温もりが心を落ち着かせてくれる。

「ごめんなさい。バイトの邪魔しちゃって‥。」

冷静に振り返られるようになったとき、自分のしてしまったことの重大さに気づく。

悠はバイト中なのに、こうして私のそばにいてくれて。

それに私のせいで店内の雰囲気も悪くしてしまったことだろう。

マスターにも多大なる迷惑をかけてしまった。

もしも私のせいで悠が辞めさせられてしまったら‥。

私は本当に悠の邪魔しかしてない。

「気にするな。何があったか話せるか?」

「ちょっとしたフラッシュバックだと思う。ごめんね。腕、痛かったでしょ?」

先程振り払ってしまった腕に触れた。

あの時は何もかもを拒絶してしまった。

私のことをこんなにも大切にしてくれる悠の腕さえも。