笑顔の裏側に

悠が私の名前を呼ぶけど、今の私には届かない。

目に映る全てが私を責め立てているように感じ、心が恐怖に飲み込まれていく。

「優美、もう大丈夫だから

「嫌!来ないで!私に触らないで!」

私を安心させようと伸ばした悠の手さえも振り払ってしまう。

悠は一瞬心底傷ついた顔をしていたけど、今の私にはそれに気づけるほどの余裕もない。

「優美に何した。」

悠の低い声がますます店内の空気を緊迫させる。

「私は知らないわよ!その子が勝手に‥」

「優美。」

さっきよりも穏やかなトーンで名前を呼ばれた。

泣き叫ぶ私を物ともせず、ふんわりとだけど力強く抱き締められた。

「嫌!離して!」

腕の中で暴れる私を宥める。

「優美。俺だよ。悠だよ。」

「怖くない。大丈夫。落ち着いて深呼吸してごらん。」

耳元でそんな優しい声が聞こえて。

言われた通り、ゆっくりと深呼吸した。

「そう、その調子。続けて。」

乱れた呼吸は徐々に落ち着きを取り戻す。

だんだんとその腕の中が安心できるものだというのを実感していく。

「優美。」

愛おしそうに全てを委ねてしまいたくなるような優しい声で、私の名前を呼ぶから。

「悠‥悠‥」

私は深い闇から抜け出すことができた。

大きな背中にしがみつくように手を回した。

それを機に、抱き上げられる。