笑顔の裏側に

「何をやってるんだ!」

怒号が飛んだ途端、お母さんの掴む力が緩まる。

「翔…」

お母さんのかすれた声からお父さんが帰って来たんだと分かった。

「なあ、沙織。お前いつもそうやって子供に手を上げてるのか?」

「いや…。そんなことは…。」

突然の登場にお母さんはうろたえていた。

いつ帰ってきたんだろう?

全然気づかなかった。

「沙織、お前は一度頭を冷やせ。あとで少し話そう。いいな。」

「はい…。」

お母さんの表情は疲れ果てていた。

「優美!大丈夫か?今から部屋に運ぶから、少し痛いかもしれないけど我慢してな。」

お父さんの声色はとても優しかった。

それだけで私は安心できた。

だけどリビングを出る時、お母さんを見ると、私を睨みつけていた。

まるで何もいうなと言うように…。