笑顔の裏側に

それから日に日に寒さは増した。

夜は一気に冷え込み、頰を刺すような風が容赦なく吹き付ける。

道端の木々は葉が全て落ち、一本一本の細い枝が姿を現していた。

そんな中、越川先輩は相変わらずで。

お金を入れるカルトンを乱暴に置かれたり。

レジを打つ姿もガチャガチャと荒い。

席に着くとわざとらしく机や椅子にぶつかってくることもある。

こんな地味な嫌がらせをするくらいなら、直接言ってくればいいのに。

そう思うことは何度かあったが、まさかその日が本当にやってくるとは思わなかった。

カフェが閉店した後、悠の着替えを待っている時に声をかけられた。

きっと悠がいない時を狙ってきたのだろう。

「悠くんの彼女の麻生さんよね?私は越川七海。同じ学校だったんだけど、あなたは私のこと、知らないわよね。」

「そうですけど、私に何か?」

いざとなると緊張してしまう。

これでは警戒心全開だ。

「そんなに警戒しなくてもいいじゃない。ちょっと話そうと思っただけなんだから。」

そんな嘘、誰が信じるというのだ。

ただの世間話の雰囲気では一切ないのに。