だけど気がかりと関連して、悩ましいこともあった。

せっかく悠の働く姿が見れても、ある人がいると全部台無しで一気に憂鬱な気分になる。

その人の名前は越川さん。

でも今日はいないみたいだ。

これで心置きなく過ごせる。

マスターはとても優しい人で、私が悠の彼女だと知ると、閉店後の悠のバイトが終わるまで中で待たせてくれていた。

こっそり差し入れをくれることも。

そしてバイトが終わった悠と一緒に帰る。

もう晩秋のせいか、夜は冷えてきた。

冷たい風が体温を奪っていく。

家に着くと急いで夕食の支度をする。

私がバイトの日は前日のうちに作り置きしてあるので、温めて並べるだけのことも多い。

夕食を食べながら、今日こそはと心で意気込む。

毎回毎回直前で怖気付いてしまい、聞けずにいたのだ。

今日は悠の方からバイトの話をし出したので、絶好のチャンスだ。

最近寒くなってきたからか、テイクアウトの注文も増えているらしい。

会話の流れを伺いつつ、聞くタイミングを今か今かと待っていた。