笑顔の裏側に

「お前の心の傷は俺たちには到底計り知れないものだということは重々承知している。だけどお母さんをここまで追い詰めてしまったのはお父さんの責任だ。仕事ばかりで家庭を顧みなかった結果だと反省している。だからお母さんだけを責めないでやってほしい。」

その言葉が余計に私の心をかき乱した。

今の私の態度がお母さんを責めているというのだろうか。

お母さんを責める気持ちは毛頭ない。

私はただ普通に愛されたかっただけなのに。

その願いさえもお母さんを苦しめているというの?

「話はそれだけですか?」

自分でも驚くほど冷たく低い声だった。

「え‥まあ、そうだな。」

目の前の2人がたじろいだのが分かった。

2人の瞳に映る私はどんな風に映っているのだろう。

「ではこれで失礼します。」

そう言って立ち上がる。

リビングを出ようとすれば、

「待てって。お前はそうやってまた心を閉ざすのか?それで本当にいいのか?」

腕を掴まれて身動きが取れない。

背を向けたまま立ち尽くす。

「悠くん、もういいの。軽蔑されても当然だもの。ただ、最後に一つだけ聞いて。もう会いたくないというなら会いに来なくてもいい。だけどどこかで必ず生きていて。」

その言葉に思わず振り返ってしまった。

一体悠はどこまで話してあるんだろう。

私が手首を切って自ら命を断とうとしたことも知っているんだろうか。