笑顔の裏側に

「大丈夫か?俺から話そうか?」

「平気よ。ちゃんと私から話すわ。」

お母さんの背中に手を当てて気づかうような素振りを見せる。

そんなに話しづらいことなのだろうか。

2人の様子を見て、やきもきする。

「そのせいで、私はお父さんのお母さん、あなたのおばあちゃんから執拗な嫌がらせを受けてきたの。」

突然のカミングアウトにこちらもどう反応すべきか迷う。

しかしよくよく話を聞くと、どうやらただの嫁姑の関係のもつれではなさそうだ。

その限度ははるかに超えているように感じる。

電話での小言や叱責、罵倒。

通りすがりでの悪口。

デスクへのいたずら。

携帯への無言電話。

PHSでの虚偽の呼び出し。

想像するだけで身震いがする。

そんな嫌がらせを何年もずっと受け続けていたなんて。

「こんなこと、お父さんには相談できなかった。私はその行き場のない辛さを何の罪もないあなたにぶつけてきた。あなたをストレスのはけ口として利用してたの。」

私が長年苦しんできた暴力や暴言の嵐の原因は、あまりにも悲しくて残酷なものだった。

心が真っ黒に染まって全てを拒絶するようにゆっくりと閉じていくのを感じる。

「関係のないあなたを巻き込んでしまったこと、本当に申し訳ないと思ってる。それによってあなたをたくさん傷つけてしまったことも‥。」

お母さんは言葉に詰まったように黙ってしまった。

重い沈黙だけが流れていく。

そんな中で沈黙を破ったのは、お父さんだった。