笑顔の裏側に

そして悠から離れて後、一思いにインターフォンを押す。

すると中からドタバタとした音が聞こえ、扉の陰から顔を出したのは、お父さんだった。

「優美、よく来てくれた。待ってたんだ。悠くんも優美を連れてきてくれてありがとう。」

半年ぶりに入った玄関は家を出た日と何も変わっていなかった。

靴を脱いで上がる。

それだけで心臓が激しく脈を打ち、呼吸が浅くなる。

「お母さんとリビングにいるから。心の準備ができたら入って来いよ。」

お父さんは私たちを玄関に残して先にリビングに戻っていた。

「最後にギュッとして?そしたらちゃんと行くから、お願い‥。」

「それくらいいくらだってしてやる。だから一緒に頑張ろうな。」

それからしばらく抱き合ってたと思う。

だけど誰も急かしたりはしなかった。

まだ胸はドキドキと嫌な音を立てているけど、次第に行こうという気持ちになれた。

悠の背中に回した手を緩めて、それを伝える。

そして一歩また一歩とリビングに足が向かった。

ノックをしてリビングの扉を開ける。

そこには食卓に並んで座っている両親の姿があった。

チラッと見たお母さんの様子は私を真剣な眼差しで見つめていた。

「さあ、優美も悠くんもそこに座って?」

お父さんが立ち上がって席に誘導してくれる。

お母さんの目の前に腰を下ろす。

瞳は合わせられなかった。

視線は少し先のテーブルの木目。