しばらく何も言わずにそのままの体勢でいると、

「今日はもう疲れただろう。ゆっくり休みな。」

そんな言葉がかけられて、横になるように促される。

「悠は、悠はここにいてくれる?」

無意識のうちに悠の腕を掴んでいた。

「いるよ。もう寝な。」

そう言って私の隣に寝転んでくれる。

「悠だけは‥私を捨てないで‥。」

「安心しろ。どこにも行かないから。」

胸板に顔を押し付けられ、しっかりと抱き締められる。

頭を優しく撫でられ、ささくれ立った心が次第に落ち着きを取り戻していく。

それでも胸の奥のざわざわとした不安が消えることはなかった。

夜中にあまりの寝苦しさに目が覚めた。

シャツが肌にべっとりと張り付いていて気持ちが悪い。

悠を起こさないようにそっと部屋を出る。

水を飲もうと冷蔵庫を開ければ、今日の夕食のメニューだったはずの食材がラップに包まれて入っていた。

キッチンを見れば、綺麗に片付けられていた。

またしても取り乱して悠に迷惑をかけてしまったことを実感し、反省する。

大きくため息をつき、洗面所にゆっくりと向かう。

汗が冷えて少し寒気がしたけど、軽くシャワーを浴びた。

リビングに戻って体温計を手にする。

立ってるのが辛くなり、壁にもたれかかるように座った。

軽快な音が聞こえて、表示を見れば、38.4度。

これからまだ上がるだろう。

何となく直感でそう思う。

何せ頭が割れそうに痛い。

絶対今日、雨に打たれたせいだろう。

自分が情けなくなり、何度目か分からない溜め息をついた。

さっきよりも寒気が強くなったけど、目を瞑ってじっと耐える。