よし、そのままマスクに移ろう。

さてマスクをどう外そうか?

適当に理由をつけて外すよう仕向ける。

俺の予想だときっと外さない。

そしてそれを理由にうまく聞き出す。

そのはずだったのだ。

でも麻生はためらうことなくいとも簡単にマスクを外したのだ。

これくらいなら俺だってそこまでは動揺しない。

ただマスクを外した麻生の顔は俺の想像を絶するものだった。

右頬に湿布を貼っているが、その上からでも十分に分かるほど、痛々しく腫れ上がっている頬。

それに視線を向ける俺を見る麻生の強い瞳。

俺はなんて言葉をかけたらいいかわからなかった。

ようやく絞り出した声は情けないものだった。

それを機に俺は我に返って麻生の頬の状態を見ようと立ち上がった。

伸ばした手もすぐさま振り払われる。

さすがに階段で落ちたなんていう理由では通用するはずがない。

頭のいい麻生だ。

そんなことは分かっているはずだろう。

なのにどうして嘘をつく?

俺が見抜けないとでも思ったか?