笑顔の裏側に

「優美、キスしてもいい?」

突然の言葉に重なった手を離してしまった。

気まずい雰囲気が漂う。

「ごめん。無理にはしないって言ったのにな。」

立ち上がって何処かへ行こうとする。

絶対に傷つけた。

「違うの!」

慌てて立ち上がり、悠の腕を掴む。

そのままふらつき悠の胸に倒れ込んでしまった。

「おい、大丈夫か?」

そのまま優しく起こしてくれる。

「うん、平気。ごめん。」

それっきり沈黙が流れてしまう。

何か言わなきゃいけないのに、何を言ったらいいか分からない。

「あのね、その‥

「優美のペースでいいから。これまで何度かキスしたことがあったから、いいかなってちょっと‥

「だから違うの!」

遮った声は思いの外、大きくて自分でも驚いてしまう。

「キスが嫌なわけじゃなくて‥。その‥何ていうか、緊張して‥。だからその‥」

まとまらない言葉は悠の唇によって止められた。

何度も角度を変えてキスされる。

少し胸を押せば、やっと離してもらえる。

乱れた呼吸を整えていれば。

「あんまり可愛いことばっかり言うなよ。抑えられなくなる。」

その言葉に頰は一気に熱を持ち、心臓はますます暴れ出した。

そんな私にお構いなく、手を引かれてソファーに座らされる。

後ろから抱き締められる形で。

正常値を超えるほど、脈拍は速くなり、これ以上持たない。

離れたくても、ガッチリと腕でホールドされている。

時折耳にかかる吐息が妙にくすぐったくて。

もう無理だと思ったその時。

インターフォンが鳴った。

助かったと思った。