そうして放課後、女子生徒をうまく巻いてようやく麻生に声をかけることができた。

応接室に呼び出し、あらかじめ用意しておいたファイルを取らせる。

机を挟んだ状態で座れば、多少手を伸ばさなければ、相手に何か手渡すことはできない。

その時に両手の手の甲がもちろん視界に入る。

そこで追求して、気になっているマスクも取らせる。

普通の風邪ならためらわずにマスクを取るだろう。

でももしマスクの下に何かがあるとしたら、きっと渋るはずだ。

そうしてもう少し追求する。

それが放課後までに俺が立てた作戦だった。

しかし俺に予想外の事態が降りかかることになった。

ファイルを取らせるところまでは完璧だった。

手の甲の痣は両手にあり、思っていたよりたくさんあった。

しかし昨日めまいがしてその時に階段から落ちたというのだ。

実際にあり得そうなことだ。

それに手の甲の痣ぐらいなら階段から落ちたと言われても、納得するしかない。