笑顔の裏側に

それから2日後。

新しい部屋に荷物が運び込まれる日が来た。

午後から来るため、午前中のうちに移動し、管理人の方と両隣の方に菓子折りを持って挨拶を済ませる。

隣は気さくなご婦人と男性の1人暮らしらしい。

残念ながら男性は家にいなかったので、後で済ませることにした。

自分の部屋に入って、業者を待ちながら悠とゆっくりと過ごす。

お揃いのマグカップにコーヒーを入れて、まったりした後、少し早めの昼食を済ませた。

2つ並んだマグカップを見て、少しだけ嬉しくなったのはここだけの秘密。

お昼の片付けが終わるとすぐに、インターフォンが鳴った。

ロックを解除し、ダンボールを運び込んでもらう。

食器や衣服はスーツケースや旅行用カバンで運んでいたため、ダンボールはそんなに多くなかった。

だから片付けもそんなに大変じゃない。

悠も手伝ってくれたので、2時間くらいで終わった。

その後は夕食の買い出しに行く。

手早く作れるもので申し訳ないけど、今日のお礼として夕食を食べて行って欲しかったから。

だけど理由はそれだけじゃなかった。

まだ私が1人になりたくないだけ。

今日からこの部屋に住むことになる。

もう誰かが帰ってくることも、それを待つこともない。

ずっと1人だ。

それが嫌で、夕食を口実に悠を引き留めている。

リビングでテレビを見ている悠の後ろ姿をそっと見つめた。

何も気づいてないふりをして、本当は私の心の内を見抜いているのだろう。

いつだって私の欲しい言葉をくれる。

だからこそ悠に甘えてしまうんだ。

大きく息を吐き出して、夕食の準備ができたと告げた。