笑顔の裏側に

それを見届けた後、私は先生と向き合う形をとる。

「お時間取らせてすみません。最後にきちんと話すべきだと思ったので。あんな別れ方ではお互いに前に進めないでしょう?」

そう言っても先生は黙っているだけだった。

逃げ出したくなる心を何とか奮い立たせて言葉を紡いだ。

「先生。私は先生に人を愛することの幸せと、愛されることの幸せの両方を教えてもらいました。先生と過ごした日々には、辛いことも悲しいこともたくさんあった。だけどそれ以上に、楽しくて嬉しくて心が温かくなるような幸せを感じた。私は先生の彼女になれて、先生と出会えて本当に幸せでした。今までありがとうございました。」

ゆっくりと頭を下げた。

涙が溢れないように、瞳に力を入れる。

今日は絶対に泣かないと決めていた。

先生との思い出に区切りをつけるために、今ここに私は立っているのだから。

「俺の方こそ、ありがとう。お前の優しさにいつだって俺は救われてた。傷つけてばかりでごめんな。幸せになれよ。」

「先生もお幸せに。」

そう言って振り返らずに英語科準備室を出る。

ドアを閉めると思わず床に座り込んだ。

その向こう側で。

『できれば俺が幸せにしたかったんだけどな。』

そんな言葉を先生が呟いているとは知らずに。