笑顔の裏側に

私は大きく深呼吸をして、自分のスカートの裾をギュッと握り締める。

そうして再び口を開いた。

「先生、最後に少しだけいいですか?」

思ったよりも声は震えていた。

それでも真っ直ぐ先生を見据える。

「ああ。俺もそうしようと思っていた。」

その言葉を聞いて、悠の方を向く。

すると頷いてくれ、私に背を向けてドアの方へと歩き出す。

頑張れと言ってくれたような気がした。

それでも見送る背中はどこか寂しげで。

私のこの言動が悠を不安にさせ、傷つけていることも私はちゃんと分かっているつもりだった。

だからこそ、ドアに手をかけた悠の背中に今言える精一杯の言葉を投げかける。

「中庭で待ってて。ちゃんと戻ってくるから。」

あえて¨行く¨ではなく、¨戻る¨と言ったのは私の気持ちを暗示したかったからだった。

全てにちゃんとけじめをつけて悠と向き合いたいから、今はまだはっきりとした言葉では伝えられない。

だけど不安なまま一人で待たせたくない。

悠ならきっとこの言葉に込めた私の想いを察してくれるだろう。

そんな願いを込めて悠を見つめれば。

ゆっくりと振り返って、

「俺はいつまででも待ってる。だから安心しろ。」

そんな言葉とともに、ドアが静かに閉まった。