笑顔の裏側に

二人で入学手続きの書類をもらい、その足で塾と学校に向かう。

どちらでも拍手と祝福の言葉をもらった。

川谷先生にもしっかりお礼と挨拶をして。

そのついでに斜め前の席を見ても、誰もいない。

「瀬立先生なら、きっと英語科準備室だと思うわ。早く知らせてあげて。この日を一番に待っていたのは瀬立先生よ。」

その言葉に頭を下げて英語科準備室へ向かう。

そしてドアの前まで来て立ち止まった。

この部屋では、嬉しいことも幸せなことも悲しいことも辛いこともいろいろあった。

ここに来ることはもう二度とないと思っていたのに。

ここに来た最後の日、私にとっては辛い思い出として刻まれてしまったから。

「大丈夫か?」

悠が心配そうに私を見つめているのを感じた。

「うん。ちゃんとけじめをつけてくる。」

そう言ってドアをノックする。

中から低い声が聞こえて、挨拶をして入った。

私たちが入ると、先生は立ち上がってこっちに来てくれた。

「結果は?」

悠と顔を見合わせて、

「「二人とも合格です。」」

自然と声が揃った。

「そっか‥。おめでとう。本当によく頑張ったな。」

先生と握手を交わす。

久しぶりに触れた手は、あの時と変わらず、大きくて。

じんわりと涙の膜が張ったけど、唇を噛みしめる。

「今までお世話になり、ありがとうございました。」

長かった受験勉強が幕を閉じ、その話に少し花を咲かせた。

「俺の方こそありがとう。お前らと過ごした日々は俺にとって一生忘れられないものになった。大学に行っても元気に頑張れよ。」

「はい。先生もお元気で。」

「ありがとうございました。」

それっきり口を閉ざしてしまった。