ドアを閉めた音と同時に、我慢していた涙が零れ落ちた。

今が授業中で本当に良かったと思う。

幸い、廊下には誰もいない。

手で思いっきり涙を拭って、無心で昇降口に向かった。

気を抜くと泣いてしまいそうだった。

靴を履き替えて、昇降口のドアを力任せに押そうとしたとき、

「優美。」

いつもと変わらない安心できる声が耳に届いた気がして。

思わず振り返れば、校舎からは見えない陰で、下駄箱に寄りかかっている悠の姿があった。

「なんで‥。面談は明日じゃ‥」

私の質問には答えることなく、そのまま近づいてきて、頰を撫でられた。

「やっぱり来て正解だった。」

そう言われてハッと気づく。

私を心配して来てくれたのだと。

「ごめん。」

悠の優しさに顔がグシャリと歪むのが分かった。

涙が次々と頰伝っていく。

それを拭ってくれる温かい手にますます止められなくなった。

「場所を移そうか。」

そっと肩を抱かれて連れてこられたのは中庭だった。

ベンチにゆっくりと腰をかける。

「もう我慢なくていい。ここなら誰にも見られない。」

そのまま胸に顔を押し付けられるような形でそっと抱きしめられる。

静かに涙が頰を伝っていく。

私は今、何が悲しいのだろう。

なんで泣いているのだろう。

それさえも分からないまま、流れに身をまかせるように涙を流していた。