いつも通りホームルームから始まり、先生が入ってくる。

久しぶりの先生の登場に、先生の周りを囲む女子たちや休んだことをからかう男子がいる。

それを側から眺めながら、やっぱり先生には先生でいてほしいなと改めて思った。

教え方も丁寧で分かりやすくて、男女問わず好かれる先生から天職を奪うことはできない。

そんなことを今一度実感して、私は今日も一生徒のふりをする。

その日、先生は私を呼び出さなかった。

そして次の日も。

今回ばかりは先生に勘付かれたくない。

きっと責任を感じてしまうだろうから。

しかし2日間、呼び出しもなく、ほとんど声をかけられることもないことに不安を感じる。

そして足の痛みはなくなり、普通に歩けるようになった3日目。

私はある行動に出た。

4時間目の先生の授業が終わったあと、私は昨日作った筑前煮を持って英語科準備室に向かう。

呼び出しがないことを案外寂しがっている自分に気づいて、苦笑する。

それでも少し様子を見るだけと自分に言い訳しながら、筑前煮を口実に先生のところに行くことにした。

周りに誰もいないことを確認してそっと小窓から中を覗けば、先生が教材を片付けていた。

「失礼します。」

生徒らしく中に入った。

「ゆ、麻生。どうした?」

そして驚いている先生に近づいて、筑前煮の入った入れ物を机に置く。

「これ、作り過ぎちゃったので良かったら。」

「おう、ありがとな。」

その間も片付けをしていて、私の方を見てくれない。

そのことに胸が少しだけ傷んだけど、気にしないふりをして、会話を続ける。

「体調はどうですか?」

そう問えばやっと私の方を見てくれた。