「いいか、言い訳でも詭弁でもいいから、何としてでも何もなかったで通すんだ。どんなに疑われても絶対に押し通せ。」

「はあ?何よ急に‥。」

話が見えない。

言われている意味を咀嚼するのに精一杯だった。

「だからどっちかが犠牲になるんじゃなくて、2人とも責任から逃れるようにするんだ。」

何となくだけど言いたいことはわかった。

とりあえず悠は私のことを心配してくれてるんだよね?

「お互いに別の彼氏彼女がいた方が、何もなかったことを裏付ける根拠になるだろ?」

「でもそれじゃあ、悠にまで

¨迷惑をかける¨という言葉は言わせてもらえなかった。

その代わりに口に手を当てられる。

「その先の言葉はいらない。俺がお前を守ってやる。」

そう言われてそのまま腕を引かれて抱きしめられる。

さっき抱きしめられた時とはまた違う、壊れ物を扱うかのように優しい手つき。

まるで本当に守られているかのような感覚に陥る。

その心地よさに自然と私も悠の背中に手を回していた。

静かな部屋の中で、抱き合う2人。

時が止まったような錯覚さえ覚える。

ただ激しく脈を打つ心臓だけが時を刻んでいた。