笑顔の裏側に

そうこうしているうちに、案の定リビングのドアが開いた音がした。

こっちに足音が近づいてくる。

「ねえ、いつまでこんなとこでサボってんの?いい加減にしなさい!あんたが遊んできた数日を取り返すのにどれだけの時間がかかるか、分かんないの!こんなところでサボってる時間なんてないのよ!さっさと自分の部屋で勉強しなさい!」

髪を引っ張られて無理やり起こされた。

頭皮がちぎれそうな痛みに顔を歪めたけど、今回ばかりはほんの少しだけ助かった。

自分の力だけでは起き上がれそうになかったから、どんな形でも起き上がる方向に力が加わるのは有り難かった。

しかしそんな状況でも、やっぱり遊んできたと思われているのだと実感する。

せっかく考えた入念な設定も、何の意味もなさなかったな。

どうでもいいことを考えながら、お母さんの後ろ姿を目で追う。

何かを取るとすぐに、出て行こうとする。

その時にバチリと視線が合った。

慌てて視線を逸らすけど、舌打ちされる。

「さっさと部屋に行きなさい!」

怒鳴れて、蹴られた。

前のめりになったけど、何とか手をついて、倒れるのは免れた。

せっかく起き上がったのに、ここで倒れたら振り出しだ。

一気に腕に力を入れて体を起こすと、玄関が激しい音を立てて、閉まった。

きっと呼び出しだろう。

これでしばらくは帰って来ない。

今日は帰って来ないかもな。

時計を見ながらぼんやりとそう思う。

そしてゆっくりと立ち上がって、冷蔵庫から水を出し、救急箱を持つ。