笑顔の裏側に

もう少しで全部見てしまうというところで、自動ドアが開く音がした。

すぐさま振り返る。

目が合うと、自然と先生の足が止まった。

慌てて駆け寄ると、

「待たせたな。」

と言われて首を振る。

そのまま一緒に花屋を出た。

帰り道はお互いに無言だった。

少なからずまだ動揺していたからだと思う。

ましてや外で話せる内容ではないし。

先生は買い物袋を片手に持ち直して、開いた方の手で、私の手をギュッと握ってくれた。

今はそれだけで十分だった。

多分考えていることは同じだと思うから。

そうして無言のまま、マンションに着き、お昼の準備をする。

今日のお昼はうどんにした。

まだ本調子ではない先生には、消化の良いものがよいと思う。

うどんを食べながら、たわいもない話を知る。

まるでさっきのことがなかったように。

お互いにそのことを話題にしてはいけないという空気を感じていた。