笑顔の裏側に

そしてぐるっと回って、あの子たちの後ろ姿を確認し、花屋へ駆け込んだ。

花屋はお客さんが誰も居なくて、少々気まずいが、商品を見ているふりをする。

だけど頭の中はたった今の出来事で一杯だった。

でもよく考えてみたら十分にあり得ることだった。

先生のマンションは学校からそう遠くない。

先生と同じ最寄駅の生徒もいるだろう。

そうすると生活圏が重なり、生徒にバッタリ会うなんてことも不思議じゃない。

何度かこのスーパーに来ているけど、その時は運が良かっただけに過ぎないのだ。

今回は先生が気づいてくれたからよかったものの、次はないかもしれない。

お互いに全校生徒に顔を知られていると言っても過言ではない状態で、見つかる可能性のある場所に2人でいるのはあまりにも危険すぎる。

木下さんのように学校でなら、上手く誤魔化せるかもしれない。

でも学校外となると、かなり厳しくなる。

写真でも撮られたら、もはや太刀打ちはできないだろう。

多分一切の弁解の余地はない。

今後絶対に控えるべきだ。

そう心に決めて、花屋からスーパーの方をこっそり見やる。

まだ先生は来ないようだ。

そろそろ花屋にいるのも辛くなってきた。

さっきから店員がチラチラとこっちを見ている。

ブリザードフラワーのコーナーから、生花をゆっくり見て回る。

色取り取りの花がたくさん並んでいたけど、もはやそれを堪能している余裕はない。

いかにも自然な感じで、花を見に来た客を装うのに必死だ。