今すぐドアを開けて確認したい気持ちを抑えて、起き上がった。

すぐにこちらに向かってくる足音がする。

慌ててベットに横になった。

ドアがノックされ、

「歩、入るわよ。」

返事をする前に開けられた。

「愛ねえ‥」

「優美ちゃんじゃなくてがっかりした?」

からかうように言う。

「まあいいわ。とりあえず診察するから。」

鞄から聴診器を取り出すと、医者の顔になる。

俺は黙って言う通りにした。

「今年はかなりひどいけど、いつから眠れてないの?」

「もうまともに3週間近く‥」

俺は毎年、だいたい11月に入る頃から精神的に不安定になる。

眠りは浅くなり、食欲も落ちる。

そのせいか、慢性的な倦怠感と頭痛に悩まされていた。

毎年のことだけど、去年までは少しずつ落ち着いてきていた。

だけど今年は去年の比でないくらいに絶不調だった。

今年はやばい。

その自覚は自分の中でも確かにあった。

「もうそんなに!?なんでもっと早く言わないのよ!睡眠薬や安定剤だって出せたのに。」

病院に行かなきゃいけないとは分かっていた。

でもそれをする気力すら残っていなかった。

毎日の仕事をこなすだけで精一杯だったし、何より認めたくなかった。

徐々に回復の兆しが見えていたのに、また振り出しに戻ってしまったことが。

大切なものができたとき、こんなにも失う恐怖と不安が自分の中に存在してしまうことに。