歩side

優美が泣きながら部屋を出て行った。

今だってきっとリビングで泣いているんだと思う。

優美の涙に濡れた顔を見た時、やってしまったと気づいた。

明らかに言い過ぎた。

これだけ看病してもらっておいて、あんなことが言える立場じゃない。

だけど、学校を休むように強要されてイラついていた俺の心はそう簡単にはコントロールできなかった。

だから俺のために学校を休むと言われた時、どうしようもない苛立ちを感じた。

優美は受験生で、今が一番大事な時だ。

俺はあいつの彼氏でありながらも、あくまで教師なんだ。

だからあの時、俺は教師としてあいつに接した。

いくら恋人同士でも、教師が生徒を休ませるなんてあってはならない。

そう自分に言い聞かせ、俺は思考を中断するように目を閉じた。

次起きたときには、物音1つしなかった。

重たい体を起こし、そばにあったポカリを飲む。

そしてゆっくりと寝室を出て、リビングを覗いてみるけど、誰もいなかった。

当たり前か‥。

あんなことを言われたら、誰だって出て行くだろう。

こうなることを望んでいたはずなのに、体よりも増して心はずっしりと重かった。

リビングにいるのが辛くなって、ベットに戻った。

寝られずに天井をぼんやりと眺めていると、ドアが開く音がした。

まさか戻ってきた?