「あんなどうしようもないやつだけど、見捨てないでやって。これからもそばにいてあげて欲しいの。」

その言葉に矛盾を感じて、すぐには頷けなかった。

「見限られたのは私の方です。」

絞り出した声は驚くほど小さく掠れていた。

涙が頰を伝い、シンクに零れ落ちる。

その音が合図のように、涙の粒は次々と溢れ出した。

「それどういうこと?」

私の背中に手を当てた愛お姉ちゃんの声が1トーン落ちたのが分かった。

「先生は‥私が先生のためにと思ってやる事なす事全部‥望んでない。」

大きく深呼吸をした。

それでも涙は止まってくれなくて、自分で言っていて悲しくなった。

「歩がそう言ったの?」

優しく背中を撫でていた手が肩に置かれ、向かい合う形にされた。

「はい。余計なお世話だって、そんなこと望んでないって‥」

「何よそれ‥」

感情を押し殺して言葉にした。

そうでもしないと言えなかった。

「突き飛ばされて、帰れ、出てけと怒鳴られました。」

今だって突き飛ばされた時の感覚が残ってる。

怒鳴られた声も耳元で聞こえてくるようだった。

淡々と告げる私をそっと抱き締めてくれた。

私は目を閉じて静かに涙を流した。