笑顔の裏側に

一頻り泣いた後、顔を洗って、先生の家を出た。

持っているものは、携帯、コートの中に入っていたICカードとマスクだけだ。

エレベーターに乗った後、携帯を開いた。

すると30分前に愛お姉ちゃんから電話が掛かって来ていた。

エレベーターを降りて、エントランスで電話をかけ直す。

「あ、優美ちゃん。歩、大丈夫だった?」

「はい。お騒がせしてすみませんでした。電話もありがとうございます。先生は学校を休んで家にいます。」

「そう。よかったわ。優美ちゃんがいてくれて良かった。」

その言葉に止まった涙がまた溢れ出しそうになった。

唇を噛みしめて、堪える。

「ッ!」

唇が切れて、声が漏れた。

口の中に鉄の味が広がる。

「優美ちゃん?」

「あ‥すみません。あの、お時間があるときに、先生の家に来ていただけませんか。先生、少し動くのも辛そうで、殆ど何も口にしてないんです。点滴などの処置と診察をお願いしたいんです。」

誤魔化すように早口で伝えた。

「分かったわ。お昼休みに一度抜けてそっちに行くわね。」

「はい。お願いします。」

そうして電話を切って歩き出す。