笑顔の裏側に

先生が渋々寝室に戻っていくのを見て、私も動き出す。

「はい、月島学園の三上です。」

「お世話になっております。麻生優美です。体調が悪いので、今日はお休みさせていただきます。」

声のトーンを落とし、喉に力を入れて、風邪っぽく装う。

「おお、麻生か。大丈夫か?」

心配されて申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

風邪どころか私は全然元気なのだ。

後ろめたさが急に顔を出して、早く切りたいという衝動に駆られた。

「今日と週末休めば、治ると思います。すみません、ご心配おかけして‥。」

「やっぱり最近風邪流行っているのな。お前の担任も体調不良で今日も休みだってよ。」

今先生と一緒にいる私にその話をされるのは困るなと思いつつ、三上先生は知らないのだから仕方ない。

というか長い。

こっちは一応病人という体で話しているのに。

まあ、気さくでおしゃべりな三上先生らしいけど。

「そうですか。三上先生も気をつけてくださいね。」

「おお、サンキューな。でも病人に心配されてもな。」

電話口で一人で笑っている。

むしろ電話に出たのが三上先生でよかったのかもしれない。

あの先生は深く考えるようなタイプじゃないし、私のことも普通に風邪だと思っているだろう。

「おっと、悪いな。いつもの癖で喋り過ぎちまった。お大事にな。しっかり休めよ。」

「はい。ありがとうございます。失礼します。」

そうして電話を切った。

大きく息を吐き出す。

思ったよりも緊張していたみたいだ。

当たり前か。

だって初めての仮病なんだから。

普段の信頼がまさかこんな場面で生きるとは思わなかったな。

苦笑しつつ、リビングを出て寝室へ向かう。

とりあえず先生が寝室から出て来る前に終わってよかった。

ノックして入る。