笑顔の裏側に

あれは私の塾の校内模試が悪かった時だった。

国語・数学・理科・社会と受けたうち、数学以外は全部1位だった。

もちろん全科目総合も1位。

だけど数学は少し失敗して2位だったのだ。

1位との差はわずか3点だった。

それがいけなかった。

なぜ算数は1位出ないのか。

なぜ3点差があるのか。

そう問いかけられても失敗したとしか答えられない。

でも麻生家に失敗は許されない。

だから失敗ばかりする私をお母さんは嫌うのだ。


どのくらいの時間カーテンと向き合っていただろう。

誰かに名前を呼ばれて振り向くと、そこには担任の瀬立先生が座っていた。

「瀬立先生…」

まさかの人物に驚きを隠せない。

「大丈夫か??」

「はい。大丈夫ですよ。」

そういえば、私倒れたんだっけ?

「体育祭、お前の断トツなリレーのおかげで、圧勝だったよ。」

「そうですか。よかったです。」

そしていつも通りの笑顔を向ける。

さっきのボーッとしていた時のことはきっと全部見られてる。

ジャージを着ていたから、痣の方は大丈夫だ。

私はこのことは誰にも知られてはいけない。

でもちょっとやちょっとではバレない。

今までだって上手くやってきた。

大丈夫だ。

先生は何も言わない。

じっと私を見つめている。