笑顔の裏側に

気に食わなかったのかそばにあった椅子をつかんで振り上げる。

どんなにお兄ちゃんみたいに頭がよくなくても何されるかはすぐにわかった。

しかしものすごい形相で勢いよく振り上げたのを見ると、恐怖で体が固まった。

必死に声をあげるが、そのまま椅子は振り下ろされる。

その時だった。目が覚めたのは。

乱れて呼吸を整えながら、夢の続きが頭の中で再生される。

あのあと私は瞬間的に目を瞑ったが、そのまま椅子は私の太ももに直撃した。

うずくまる私をお母さんは見下していた。

「立ちなさい。早く立ちなさい。!」

立てるわけない。

それはジンジンと痛む太ももが物語っている。

そんな時に、お母さんの携帯が鳴った。

「はい…はい…。すぐ行きます。」

きっと病院からだろう。

私なんて置いて平気で行っちゃうんだ。

こんなにも体中が痛いのに。

そんな私なんて見向きもせずに。

「本当、あんたなんて生まなきゃ良かったわ。」

そう吐き捨ててお母さんは家を出て行った。