笑顔の裏側に

「まずはごめん。お前の言う通りだよ。木下のこと、いくらだって引き剥がすことはできた。それをしなかった俺が軽率だった。ただ教師として不安を抱えるあいつを支えてやりたかっただけなんだ。」

黙っている私を見て、先生は尋ねる。

「お前は木下の気持ちに気づいていたんだな。」

そうだよ。全部知ってた。

だから余計に不安だったし、嫌だった。

その言葉に小さく頷いた。

「ごめんな。不安にさせて。言い訳にしか聞こえないかもしれないけど、俺は今日、木下に告白されるまで知らなかったんだ。だからといって許されることしたとは思ってない。でもこれだけは信じてほしい。」

そこまで言うと先生はお茶を飲んだ。

「俺は誰でもいいなんてそんな中途半端なこと思ってない。木下のことも一生徒にしかすぎない。本当に好きなのは愛してるのは優美、お前だけだ。」

涙がとめどなく溢れる。

その言葉がずっと聞きたかった。

今度は私の番だ。

今こそ素直になる時だよね?

「ごめんなさい。心にもないこと言って傷つけて…。大好きです…。本当に大好きなんです…。だから不安なんです。私は愛を受け取るに値しないから、先生が離れていってしまうんじゃないかと…。本当にごめんなさい。」

必死に謝る。

あの時ちゃんと先生の話を聞いておけば、こんなことにはならなかった。

一方的に問い詰めて。

何も言ってくれないことへの苛立ちと不安に押しつぶされて。

私は自分のことでいっぱいいっぱいだった。

先生の気持ちなんて考えている余裕がなかった。

泣き続ける私を後ろからそっと先生が抱きしめる。

頭を先生の胸に預けた。

「そんな悲しいこと言わないでくれ…。」

耳元でそう言われ、一瞬で涙が止まる。