笑顔の裏側に

そんな私に先生が近寄って来る。

「待ってたんだ、話がしたくて。」

何なの?

もう私たちは別れたのよ?

いまさら何を話すと言うの?

「話すことはないと言ったはずですが。」

そう言って先生の横を通り過ぎる。

早足で歩いても、先生に先を越され、門を手で抑えられる。

「待てって。少しだけでいい。少しだけでいいから、俺の話を聞いてくれ。」

真っ直ぐ見つめられ、視線を逸らすことができなかった。

「分かりました。入ってください。」

先生を門に通し、鍵を開けて入るよう促す。

「いやでも…。ご両親は?」

ここまで押しかけといて、そこを気にするのか。

「両親ともに出張でしばらく家に帰ってきません。私一人ですので、お構いなく。」

そう言えば、ためらいながらも入った。

そのままリビングに誘導し、お茶を出す。

「それで、話とは何ですか?」

どうしても突き放したような言い方になってしまう。

本当は来てくれて嬉しいのに。

ずっと声が聞きたくて会いたかったくせに。

どうして素直になれないんだろう。

強がることばかりを覚え、肝心な時でさえ本当の気持ちを伝えられない。

私はいつだってそうだ。