笑顔の裏側に

木下を引き剥がして視線を合わせる。

「ごめん。俺にとってお前は一生徒にすぎない。だからそばにいることはできない。それでも俺は一生徒としてお前を応援してるし、お前の頑張りを近くで見守ってる。」

きちんと断った。

期待を持たせないように。

でも決して教師としては突き放さないように。

「そうですよね…。ちゃんと言ってくれてありがとうございます。さよなら。」

木下は早口でそう言い、走って教室を出て行った。

追いかけることはしない。

俺が今向かうべきは優美のところだ。

今日やるはずだった仕事を放り出し、必要最低限の仕事だけを片付ける。

それが終わるとすぐに学校を出た。

道が渋滞していて全然進まない。

焦る気持ちを何とか抑える。

優美の家に着く頃には20:30を過ぎていた。

家にいるだろうか?

それとも塾に行ってるかな?

家の中から明かりが漏れている様子はなく、真っ暗だった。

それなら帰ってくるまで待てばいい。

俺はあいつの部屋であろう2階の窓をぼんやりと眺めて優美を想った。