笑顔の裏側に

次の日。

何としてでも麻生と話そうと最終手段を講じる事に決めた。

もはや公私混同。

職権乱用だ。

まあ、でも今に始まった事じゃない。

昼休みは新井。

放課後は木下。

指導の先約があるが、今日何としてでも話さなければならない。

そうして終礼時。

「麻生、少し残って。」

みんなの前でそう言えば、麻生は来ざるを得ない。

すると渋々俺のところに麻生がやってきた。

「何でしょうか?」

「17:00、いつもの場所で待ってる。絶対に来い。」

強めに言えば、麻生は静かにうなづいた。

それを確認したあと、一度職員室に戻り、終礼時のカゴを置いて教室へ向かう。

教室へ入れば、

「先生!」

笑顔で木下が駆け寄ってきた。

木下は過去問を持ち寄り、質問事項を述べ始めた。

俺はただそれに答えていく。

長文の問題の半分ぐらいが終わった時だった。

木下の頬に涙が伝ったのは。

1度溢れてしまえば、次々に流れる涙。

「どうした?」

「先生、もう私頑張れない。」

そう言うと、木下は俺に抱きついて声を上げて泣き出す。

引き剥がそうにも強い力で服を掴まれ、どうしようもなかった。

ただ俺は木下が落ち着くまで待とうとしばらく様子を見ていた。

それがいけなかったのかもしれない。

バタバタッとドアの方で音がする。

何かと思ってみればそこには…。

抱えていたノートなど落とし、呆然とこちらを見つめる優美の姿だった。