笑顔の裏側に

「優美、行こう？」

悠の声で我に帰る。

「あ、うん。」

私は鞄を持ち、教室を後にした。

塾に向かいながら、悠が私に問いかける。

「何かあった？」

「え？何もないよ？」

さっきの様子を見られていたのではないかと内心ヒヤヒヤしながら、平然と返す。

「さっきぼんやりしてたけど、体調悪い？」

悠の言葉を聞いた途端に申し訳なくなる。

そんな心配してもらえるような理由じゃない。

受験生なのに恋愛に現を抜かしているという次第だ。

「そんなことないよ。ただ面談いつにしようかなって考えてただけ。悠はいつにした？」

少々ズレてはいるが、無理な理由ではない。

不自然にならない程度に話題をかえる。

「俺は明日の昼休み。優美は？」

「悠はもう入れたんだ。予定表の前、すごく混んでたでしょ？だから私はまだ入れてなくて…」

「そっか。早めに入れないと、いい時間なくなるよ。」

確かにそうだよね。

でも逆に都合がいいか。

入れる時間がそこしかないってことで、不自然に思われないかも。

その後は塾で受ける授業の話をした。