ホテル街だったから、泊まるとこなんて選び放題って言っていいくらいたくさんあった。
無意識なんだろう。
茉央ちゃんは安っぽい電飾でギラギラ光るホテルを通り過ぎて、少し落ち着いた雰囲気のホテルに入っていく。
「茉央ちゃん、まだ歩ける?」
「ん…大丈夫…」
繋いだ手はまだ熱いままで、多分茉央ちゃんは明日になったら今こうしてることなんてすっかり忘れてんだろうな、なんて思って苦笑い。
フロントで受付してる時、限界がきたのか茉央ちゃんは俺にピタッとくっついて動かなかった。
幸い部屋はあいてて、数分もしないうちに通される。
茉央ちゃんの頭をポンポンと叩くと、くっついていた体を少し離して、俺に引っ張られるがままに歩き出した。
こんなの、過保護にもなるでしょ。
相手が俺だからいいよ。
だけど、もし今日俺が茉央ちゃんを迎えに行かなかったらって考えたら。
…死ぬほどやだね、この状況。



