あのね、先生。-番外編-


繋いだ手は熱いくらいで。子供体温っていうのかな、眠い時にあったかくなる感じなのかもしれない。

「茉央ちゃん、そっちじゃないよ」

多分道も分かってないのに歩き出すから引き止めるけど、止まらない。

茉央ちゃんの家に行こうか俺の家に行こうか迷ってたけど、どっちにしたって今向かってるのは真逆。


「茉央ちゃん?」

聞いてるのか聞いてないのか、返事が返ってこないから分からないけど、鼻歌を歌いながら歩く。

どうせ2人とも明日は休みだから遅くなっても構わないけど。

…ただ、ここはちょっと。


「…ここ?」

今だにふにゃふにゃ笑ってる茉央ちゃんは、この通りに何が集まってるのか分かってるのかな。

「…蓮くーん、泊まる…?」

「え?」

そう言った茉央ちゃんの目はもう閉じかけてて。そうか、眠いのか。どこでもいいから休みたいってことか。

多分ベッドがある場所ならどこだって良かったんだろう。俺が返事をする前に茉央ちゃんは歩き出す。