「咲良本人にはかけたんですか?」
「少し前にかけたんですけどね、出ませんでした」
とは言いつつも、今度は出るかもしれないと思って茉央ちゃんの名前を探した。
盛り上がってるからって、こんなに遅くまで連絡に気づかないなんてこと今まで一度もなかったもんな。
だから不安なんだよ。
「案外出たりして」
無機質なコールの音が数回響く。
隣で楽しんでる中村先生の言葉は、なぜか当たった。
コールの音が途切れる。
「あ…もしもし、茉央ちゃん?」
ほんとに出た、なんて笑う中村先生の声は無視して、耳元で聞こえる茉央ちゃんの声に安堵した。
『…ん…もしもーし…蓮くんー?』
安堵したのは一瞬で、耳元で聞こえたその甘ったるい声に思わず目元を手で覆う。
何、これ。
酔っ払ってんの?
珍しいじゃん、いつもこんなになるまで飲まないのに。こうなる前に自分から飲むのをやめるのに。



