それでもたまに、あたしが気づくこともあって、茉央はそのとき必ず言った。
″付き合いたいとかじゃないから″って。
今考えれば女の子達からの視線を避けるための言葉だったんだろうなって。
だから無理に気持ちを伝えろ、なんてことは言えなかった。
「じゃあ、またね」
「うん、またね」
だけどね、篠原先生を見てる茉央を眺めてると、どうしても背中を押さずにはいられなかった。
茉央が初めて自分から、あの人が好きだと言ったから。彼の立場を知って、泣きそうになってた茉央の味方になってあげたいと、素直に思った。
「梨花、楽しみだな」
2人の後ろ姿を見つめながら、白城くんは楽しそうに言った。
「…そうだね」
ねぇ、やっぱり茉央は誰からも愛されるタイプの子だね。
あたしも白城くんも加地くんも中村先生も、茉央に何かあったら絶対に放っておけないんだから。



