玄関のドアが開く音が聞こえてきて、体の力が一瞬抜けた。

よかった、帰ってきたんだ、って。

それと同時に、もう一つ見落としてたことがあったな、って思った。


今日はバレンタインデーで、蓮くんがすごくモテる人だってこと。


「…おかえり」

その姿を見れば、どうして遅れたのかなんて聞かなくても分かった。

蓮くんはいつもそんなに大きな鞄を持っていくタイプじゃないから、きっと入らなかったんだろう。

大きな紙袋を一つ。もう片手には小さな紙袋が何個かぶら下がってる。


「ごめん茉央ちゃん、連絡しようと思ったんだけど…」

「いいよ、別に」

なんか、心配したのになーって、ちょっと悲しくなったんだ。

だってどう考えてもその紙袋の中身は、女の子からもらったお菓子だもん。