「その彼女さん、どんな方法で先生のこと堕としたの?」

堕としたって…

確かに先に堕ちたのは俺だけど。

「俺の一目惚れ」

簡単に言えば、そうじゃん?

一目惚れ、なんて言えば周りにいた女子生徒は興奮したように騒ぎ出す。


「嘘でしょ!彼女さんどんだけ可愛いの!」

「んふふ、俺が出会った中で一番可愛くて、大事な人。だって俺ずっと片思いして、やっと手に入れたんだもん」

そう言うと、また騒ぎ出す。

茉央ちゃんのことを聞かれて嬉しくなって、余計なことまで喋りすぎた。

だけどもう騒ぎ出した生徒を落ち着かせるような言葉も思いつかないし。


「やばい、蓮くんますます好き!」

「え、何で?」

「その一途な感じたまんない!」

「いいなー、彼女さん。蓮くんにこんなに愛されて幸せものだよねー」

…まあ、確かに茉央ちゃんは時々「あたし、幸せ」なんて可愛く言うけど。

それを言うと何かバカップルみたいで恥ずかしいから絶対言わない。


「あ、俺もう行かないと」

「えー、もう行くの?」

引き留めるように囲まれてしまって、これじゃあいつまで経っても美術室には行けない。