「まあでも、面白いよな」
「面白いって?」
「高野。見てて飽きないっつー意味では、その辺の女子社員よりも俺には特別な存在なんだけど」
出会ったことのない人種だった。
だってあんな干物女、いねーよ。
家に焼酎の瓶がストックしてあって、つまみに出てくるのが手料理、なんて可愛らしいものだったことはただの一度もない。ほんとにおっさんみたいなやつ。
容姿はそれなりに良いのに、中身がそれに伴っていない感じが、着飾らない素って感じでいいと思った。
…いや、ちょっとおっさん過ぎだけど。
「ふーん、じゃあまあ期待出来る関係ではあるってことだな」
「期待すんなよ」
「いや、俺はあの子ならありだと思うけどな。あれだけ咲良と似ても似つかない子なら、逆に清々しいじゃん」
確かに、咲良とは似ても似つかないし、何なら真逆にいるくらい共通点のカケラもないような女だ。
「ま、頑張れよ。相手がいるなら、それはそれでいいことだし」
伝票を持って立ち上がった白城は、奢ると言ってレジの方に行ってしまった。
それに続いてレジに向かって、たまたま見つけた女子が好みそうな砂糖菓子を見て、何を思ったのか手に取ってしまって。
「…加地、甘いもんダメじゃなかったっけ?」
「ん?ああ、まあ」
食べるのは俺じゃない。
あの干物女もきっとこんなのは好みじゃないだろうけど、貰った反応を見るのは悪くないと思ったんだ。
当然のことながら、渡されて数秒後に噴き出した高野とは、しばらくこのままなんじゃないだろうか。
‐END‐