「前の彼氏がさ、加地くんが置いて帰った焼酎のボトル見て、いろいろあって喧嘩しちゃってさー。加地くんが説明した方が早いのになーって思って」

「何それ聞いたことねぇ」

「あの時はほんとに連絡先知ってたらこんなに面倒なことにならなかったのになって思ったよね」

サバサバを通り越して干物なこの女には、確かに前の彼氏のような男はさぞ重たかったことだろう。


「高野さんって今彼氏いないの?」

「うん、いない」

「こんな干物に彼氏なんて出来るわけねぇだろ」

「あんただって中身おじさんじゃん」

「あ?」

正直、今の会社に入社して告白されたことは何度かある。

だけど一度もそれを受け入れたことはなかった。


「加地と高野さんって多分すげー相性いいよな」

「は?やめろよ」

とは言ったものの、こう言われたのは初めてじゃない。

「それよく言われるんだよね。実はあたしも自分でよく思うんだけど」

「やっぱり?加地がこんなに女の人と仲良くしてんのってさ、咲良と梨花以来じゃん。珍しいし、合ってるってことじゃねーの?」

転校して白城たちと仲良くなって、4年くらいか。

実際前の学校でもそんなに仲がいい女子がいたわけじゃない。

それを知らないのにこう言ってるってことは、やっぱりこいつは俺のことをよく分かってるってことなんだろう。