しっかりと決まったそれに安心したのはきっと、心のどこかでやっぱり咲良のことを考えていたからだろう。

早く決まればいいと思ってた。

現にこうして結婚が決まった状況になれば、心から祝福できたし。

「やー、実感ねぇよな」

「そうか?」

「うん、何かわかんねぇけど」


ちゃんと決まってくれて、やっと俺はちゃんと咲良を心の中から消せた気がするんだ。

「どう?」

「は?」

「咲良が結婚するってちゃんと決まって、どう?」

こいつほんとはこれを聞きに今日俺のとこまで来たんじゃないかって思った。

心配されてんのか、これって。


「…おめでとうって思ってる」

「正直、もっと戸惑うかなって思ってたんだよな、加地」

「まだ未練あると思ってたってことか」

この感情が未練だって言うなら、確かに未練を持ったままだったのかもしれない。

でも、それも綺麗さっぱりなくなってしまったから、どうこうしようなんて気は全くないんだ。


「未練とはまた違うじゃん」

俺自身にもわからない感情は、確かに咲良と別れてからずっと俺の中にあって、それ自体が何なのか分からないからどうしていいかも分からなかった。