「じゃあ…よろしくお願いします」

深々と頭を下げてそう言うから、面白くて思わず噴き出した。

「…笑わないでください」

「いや、そんな深々と」

「だって、居候とそんなに変わんないですよね!?」

居候て。

面白いなこの人。


「同棲って言ってんでしょ。嫌じゃないなら黙ってうちに来ればいいんですよ。俺がいいって言ってんだし」

「わあ、強引」

強引なんて言いながら、笑顔が嬉しそうだからきっと、俺の提案を受け入れたってことだろう。

それなら何だっていい。

心配しながら生活すんのは嫌だし、物騒なやつが隣に住んでるままなのはやばいじゃん。


「来週にでも引っ越します?」

「来週ですか?急ですね」

「来週なら俺手伝えますけど」

「…じゃあ今週にしようかな…」

「はい、決まり」

半ば強引に取り決めた引っ越し。


引っ越しの時に隣に住んでる男に会って、今後関わったらどうなるか存分に教えてやったことを、吉野先生は知らない。

それと同時に、俺ってこの人のこと思ったよりも好きなんだなって実感したことも、絶対に言ってやらない。

‐END‐