確か、あの日さんざん結婚の話をしたにもかかわらず、しばらく何の動きもなかったからすっかり忘れてた。

そういえば言ったっけ。

急に結婚しそうだよなって。

それ言ったの俺じゃん。

「おめでとう、咲良さん」

ようやく状況を把握したのか、俺の隣にいる彼女は口元を両手で覆って嬉しそうにそう言った。


よく見れば咲良の左手の薬指には今までなかった光るものの存在があって。

分かってはいたけど、良かった、こいつ大事にされてんだな、ってよく分かんねぇけど父親みたいな気持ちになって笑える。

中村先生の妹みたいですよね、なんていつか篠原先生に言われたことがあったけど、ついにそれを通り越して娘になったわけ?

「ありがとうございます」


はしゃいでる女2人を眺めながら、篠原先生に聞く。

「いつの間にこんなことになってんですか」

「ゴールデンウィーク前にプロポーズしまして、ゴールデンウィークに茉央ちゃんの実家に挨拶に行ってきました」

「ほんとに急っすね」

いつかするとは思ってたんだけどさ、実際にこう急に報告されるとやっぱ驚くな。

まあでも、いつになったって失敗なんてことはまずないだろう。


「おめでとうございます」

「んはは、ちゃんと祝ってくれるんですね」

「祝わない理由なんてないですからね」