「あと30分ってとこですかね」

中村先生は心底気だるそうな顔でそう言って、パソコンに向かった。

「ふふ、それならあたし待ってますね」

待ってますね、って言ったのに、吉野先生はそのままドアを閉めて出て行った。


「どこ行ったんですかね」

「さあ、でも待ってますって言ってましたし、戻ってくるんじゃないですか?」

素っ気ない言い方をしてるくせに、吉野先生が出て行くときに視線を向けてたことは知ってる。

表には出さないけど、ちゃんと想ってるのは何となく分かる。

これは茉央ちゃんが教えてくれたことだけど、中村先生は軽い気持ちで人と付き合えるほど器用な人じゃないって。

確かにそうだ。

彼女なんていないならいないでいいタイプの人だし、好きじゃない人を彼女として扱うことが出来ないタイプだ。


「この辺でデートですか?」

「何時に終わるか分からなかったんで待ち合わせは近くにしたんですけど、下手したら生徒に会いますよね」

「会うでしょうねー。生徒によっては絡んでくると思いますけど」